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「ラザニア」ー パスタになりかけたニー ー

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ニーが夢を見た。お昼ご飯を食べている間、ずっと話して聞かせてくれた話を書き出してみました。話している本人も途中からかなり話を創っていますが(笑)楽しそうに話してくれたので、ここに書き留めておきます。
テープに撮っていたわけではないので、書き起こしもかなりいい加減ですし、彼女が言葉に仕切れなかった「えーっと、丸くって大きくってえ」みたいな表現を「大きなつぼ」と書き直したり、彼女が言い表せるわけもない「すっかり」とか入れたりして、かなり創っています(笑)。
まあ、小学2年生のニーの1つの思い出として。
本人(ナーも)がその気になればシリーズにします(笑)



ニーが散歩をしていた。家の近くの公園で。
するとどこからかいいにおいがする。

「トマトソースのいいにおい、どこかでパスタを作ってるのかなあ。今晩のご飯はパスタが食べたいなあ。」

ママに頼んだら作ってくれるかな、そう思いながら歩いていたら、突然目の前に大きな鬼が2人やって来た。

「おい、おまえ。これから俺たちパスタを作るから手伝え。」

「ええー!」

こわいなあ、と思ったけど、もしかしたらご褒美にトマトソースのパスタを食べさせてもらえるかもね。さっきからトマトソースの匂いが気になってるの。お腹がすいたなあ。パスタ食べたいなあ。

すっかりパスタをごちそうしてもらえると思ったニーは、とことこ鬼の後をついていった。

ついた所は洞窟の中。
奥へ奥へ入っていくと、大きなつぼが大きなたき火にかかっている。
そこからとってもいいにおい。

「ああ、これがさっきのトマトソースだ。」

もういよいよだ。すっかりパスタを食べる気分。
何を手伝えばいいのかな。お皿を出したり、コップを並べたりだったら、いつもママのお手伝いをしてるよ。でもパスタを茹でるのはやだなあ、だってあんな大きな火、とっても熱そうなんだもの。

「ねえ、何を手伝えばいいの? パスタを茹でるの?」

大きなお鍋にどんどんお水を入れている鬼さんに聞いてみた。大きなバケツがひっくり返りそうなのに、まだまだ足りないって顔をしている。

「いや、お前はなにもしなくていいよ、お前がパスタになるんだから。」

「ええっ?なんのこと?」

そうしたらもう一人の鬼さんも、肩に大きなバケツを乗せながらこっちにやって来る。

「お前はこのテーブルの上に横になってるだけでいいよ。俺がお前をパスタみたいに切ってくから。」

「ええっ、私はパスタじゃないよ。ママが言ってたもん。パスタは小麦粉をぐるぐるにして、ぺったんこに伸ばして...」

「だからお前を薄く伸ばして切ればいいのさ。」

「だ、か、ら、私は小麦粉で出来てないもん。」

パッとドアの方に向かった。もうとにかく思いっきり走ってにげなきゃ、って思った。でも、扉が閉まってる、どうしよう!!って思ったら扉の下にすっと吸い込まれた。体が扉の下をくぐっていく。すっと通り抜けたとき、やったーラッキーって思ったよ。でも、ちょっと違うんだった。
だって、体がすっかりペッちゃんこになってたんだもの。扉の下の隙間を通り抜けた時に、すっかり伸ばされちゃったんだ。だって、なんだか背の高さも凄ーく高くなったみたい。

ひらひらしている体で一生懸命走った。
洞窟を抜けて、外に出た。家の近くの公園まで来た。でもまだまだ鬼さんたち追っかけて来る。

「まてー、後は切ってくだけなんだぞー」

やだよ、鬼さんに食べられちゃうの。痛いよ、怖いよ。一生懸命に走ったけど、ぺらぺらの体はなかなか言うことを聞かない。本当だったらもっと早く走れるのに。だって、ニーはかけっこでクラス一番だったんだよ。去年の運動会ではびりだったけど、あれは何でだか、知らないうちに2年生のお姉さんたちの列に入れられてたんだもの。そうじゃなかったら一番だったんだもん。もっと早く走れるんだもん。

もうちょっとで鬼さんたちに捕まりそうだった。
怖くて悲しくて涙が一杯出て来た。
どうしてこんなことになっちゃったのかなあ。
パスタが食べたいなあって、わがまま思ったからからなあ。

もう顔もなみだでべちゃべちゃになっちゃって、足もすっかり疲れちゃって、もうダメだあ、って思った時に、目の前にふっとジンジャーブレッドメンが現れた。

「だからさ、ぺちゃんこだったら走れないだろ。ぺちゃんこでいいのはパスタとクッキーだけなんだよ。」

「じゃあどうしたらいいの?もういやだよ、走れないよ。」

「だからさ、体を膨らますんだよ。そうしたらパスタに出来ないからさ。鬼さんたちもあきらめるよ。」

「だって、どうやったら膨らむの!」

そうしたら急にジンジャーブレッドメンがストローを出して来た。
そうして私の口に反対側を加えさせるとぷーって息を吹き込んで来た。
どんどん、どんどんお腹が膨らんでいった。お腹に溜まった空気はどんどん足にも溜まっていった。ほら、手も、お顔も、どんどん膨らんで、もうすっかり風船みたい。

って、あれ? 私、風船じゃなーい!!

えっ?えっ?って思っていたら、急に鬼さんたちが立ち止まった、とってもつまんなそうな顔してる。

「あああ、あんなに膨らんじゃったらパスタに出来ない。」
「そうだね、あれじゃあおいしいパスタにならないよ。焼いてパンにするぐらいかな?」

そういって、鬼さんたちは帰って行った。
良かったよ、助かったよ。パスタにならなくて済んだんだ!
ママゴメンナサイ、いつもわがまま言ってるから罰が当たったんだね。もう、好き嫌い言わないよ。「パスタじゃなきゃいや」なんて言わないよ。

そう思ったの、本当にね。でも、気がついたらもう1つ困ったことになっている。
そう、膨らんだ体、これどうしたらいいのー、背が高すぎて、大きすぎて、ふとっちょさんで、お家に入れないよ。

そうしたら、足下でジンジャーブレッドメンがニヤって笑った。

「だからさ、パンにちょうどいい具合。よーく膨らんだから、おいしいパンになれるよ。でも、クッキーにしちゃうのもいいかなあ。」


えええ! 嫌だよ、パンになるのもクッキーになるのも。
ええーん、誰か助けてよー。

そう思ったら目が覚めた。
ママがベットのそばに立って笑ってる。
あれれ、夢だったんだっけ?
ああ、よかった。
そう思ったらまた寝ちゃったんだ。



次の日、ママが私に聞くの。「今日の晩ご飯、何にしよっか?」

「パスタがいい! トマトソース、たっぷりのヤツね。」

だって、昨日食べ損なったもんね。あんなにいいにおい、まだお鼻の中に残ってるよ。あれ、違うよ。だめだったんだっけ?パスタ。わかんないけど、何でだか、パスタって言っちゃいけないような気がする。でも、そしたら何でパスタって思ったの?このソースの匂い、ってあれれ?昨日、もう食べたんだっけ?

「ねえ、ママ。パスタってお願いしてもいいの?」

「あれえ、珍しい。いっつも『パスタじゃなきゃ嫌だー、トマトソースじゃなきゃ嫌だー』って、言ったら絶対にいうこと聞かないのに? なんで今日はそんなこと聞くの?」

「じゃあ、構わない?」

「いいよー、なんでだか今日はママもトマトソースの気分なんだ。」

じゃあいいや。だったら絶対、今日の晩ご飯はトマトソースのパスタだよ。


おしまい